前層(Pre-layer)と後層(Post-layer)は、視覚法則がどのように動作しているかによって区別される、私自身が作った概念である。 美術史の用語ではなく、視覚の物理的な動作を基準にした分類である。
視覚法則とは、 焦点・図地・方向・収束・安定・視線誘導 といった、目が世界に先回りして秩序を与える力の総体である。
視覚法則がどのように扱われたかによって、美術史を次のように再配置できる。
エジプト、インド細密画、浮世絵など。 画面は記号・図像・型によって決まり、視覚法則はまだ働かない。
→ 前層/後層の外側
レオナルド、ラファエロ、ミケランジェロ、カラヴァッジョ。 視覚法則は安定したものとして扱われ、空間は収束し、中心が成立する。
→ 後層の前史(視覚法則=安定)
ティツィアーノ、ティントレット。 光が生成し続け、中心が弱まり、空間が揺れ始める。
→ 前層の萌芽(proto-front layer)
ここで初めて、視覚法則が「揺れうるもの」として扱われる。
- 焦点が消える
- 図地が安定しない
- 視線が漂う
- 判断が宙吊りになる
→ 前層の誕生(origin proper)
- モネ:空間の揺れ
- セザンヌ:形態の揺れ
- ポロック:運動の生成
- ロスコ:光の生成
視覚法則が収束せず、生成が続く状態が画面全体に広がる。
→ 前層の展開と極限
補足:視覚法則は作家内部でも揺れたり収束したりするため、 一人の作家が前層と後層を行き来することがある (例:モネ、セザンヌ、ポロック)。
19世紀以前には、視覚法則は“使われるだけ”で、揺らされることはなかった。 視覚法則は安定したものとして扱われ、画面は必ず収束した。
しかし、マネによって視覚法則は初めて「揺さぶられうるもの」として扱われた。
- 視覚法則が起動している
- しかし収束しない
- 判断が宙吊り
- 生成が続く
この状態が 前層 であり、 これが歴史上初めて成立するのが 19世紀後半 である。